VRのUXデザイン/ユーザー体験設計

VR UXデザイン

2016年はVR元年とも呼ばれ、数多くのVR関連サービスが市場にリリースされましたが、今回はVRのUXデザイン(ユーザー体験設計)について、どのような点に考慮してデザインすべきか、UXデザインの観点からVRを考えていきます。また、後半ではVRを活用したUXデザインの方向性についても考察していきます。

イノベーションが期待されるVR市場

Greenlight VR社の調査によると、2015年にVR企業が調達した資金総額は2.8億ドルを超え、2011年から比較すると約13倍の投資が行われています。また、OCULUS、Matterport、RazerをはじめとしたVR系の企業数は2005年から2015年にかけて、およそ15倍にも膨らんでおり、VRに対して市場がどれほど期待しているかが分かります。

VR企業が調達した資金総額推移

VRのUX(ユーザー体験)は何か?

VRのUXにおける最大の特徴として「臨場感・没入感」が挙げられると思います。これは従来の1視点で固定された映像・動画では、どれほど精細度を改善しても得られがたい体験です。

このUXは、およそ以下の体験へブレイクダウンできると思います。

1.360°の視界を自由に見渡し、空間や状況を理解することができる体験

例)スマホを使った建築物件の閲覧、医療現場のカメラ映像の閲覧など

2.自分の好きな場所と時間へ実際に行ったような体験

例)ヘッドマウントディスプレイを用いたバーチャル観光など

3.ゲームのような非現実世界に自分が存在するかのような体験

例)VRシューティングゲームなど

VRのユーザー体験

臨場感・没入感を作り出す要素・要因

臨場感・没入感の構成要素

臨場感の研究を行っているユニバーサルメディア研究センターの安藤氏グループの報告によると、臨場感は、①空間要素、②時間要素、③身体要素から成り立っており、それらの要素は更に以下のように分解できるようです。

①空間要素

1.立体感

空間に存在する物体の観察者からの距離や立体形状に関する感覚。

2.質感

物体表面のざらつき、硬さ・柔らかさ、光沢、透明度、温冷等に関する感覚。これらの情報から人は物の材質を推定しています。

3.包囲感

自己の周りに空間的な拡がりを感じる感覚。その空間に埋没する没入感、あるいはその場の雰囲気を感じる空気感も包囲感の一種と考えられます。

②時間要素

1.動感

環境の時間的変化を捉える感覚。人は物の動き(速さ・方向)を瞬時に推定しています。

2.因果感

ある事象が他の事象が原因となってその結果生じていると感じる感覚。

3.同時感

異なる事象が同期して生じていると感じる感覚。例えば、物と物が接触した映像と衝突音が同期して得られると、人はこれらが同一の物理要因で生じていると感じます。

③身体要素

人は環境を空間的・時間的に正確に捉えたとしても、そこに自分自身を感じるとは限らず、環境とともに自己の身体を感じる時、臨場感をより高く感じと報告されています。

1.自己存在感

自己の身体全体または身体各部の状態(位置・方向・動き)を感じる感覚。

2.インタラクティブ感

環境に存在する物や他者に働きかけた時に特定の反応が得られる相互作用の感覚。

3.情感

対象物に対して身体が感じる快 or 不快の状態であり、このような感情が生じると人は高い臨場感を感じます。

臨場感を生み出す要因

次に臨場感を生み出す要因として、安藤氏グループは①外的要因と②内的要因を挙げています。

1.外的要因

外的要因による臨場感とは、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚などの五感から得られる物理情報にもとづく臨場感です。

2.内的要因

内的要因による臨場感とは、過去の経験・学習により脳内に蓄積された感覚の記憶にもとづき生成される臨場感です。例えば、波の音を聞くと海の風景がリアルに目に浮かびますが、これは過去の経験から想起される視覚イメージが臨場感を作り出しているためです。

VRのUXデザインは視覚/聴覚のUI設計が重要

外的要因として五感から得られる情報で人は臨場感を得ていますが、その五感から得る情報量は等しくなく、人は視覚と聴覚だけで94%の情報量を得ています。そのため、VRの臨場感を生み出すUXデザインにおいては、特に視覚と聴覚にこだわったUI設計が必要になります。

五感で得る情報量の割合

また、五感(外的要因)と記憶(内的要因)を切り口にすると、UI設計で注意すべきポイントが考えられます。

視覚

  • 空間要素(立体感、質感、包囲感)を満たすハイクオリティな映像/動画
  • ユーザーの動きに合わせた映像/動画スピードのチューニング
  • 体の部位を見れたり、ユーザーの動きに応じてVR映像内の体も動かす(モーションコントローラーの活用)
  • ユーザーのアクションに連動した映像/動画の変化

聴覚

  • VR映像内における対象物との距離・方位・スピードなどに応じて音を変化させる(3Dサウンドの活用)
  • ユーザーが期待する音との一致
  • 傾きや重力などの平衡感覚を実際の体に感じさせる(エンターテイメント系のVRに多い)

嗅覚

  • VR映像/動画に映し出された状況に合わせた匂い(山の匂い、海辺の匂い、など)

触覚

  • VR映像/動画に期待される風圧や温度(エンターテイメント系のVRに多い)

味覚

  • VR映像/動画に期待される味(海辺にいる時のしょっぱい味など)

記憶

  • ユーザーの記憶、予感に合った演出(部屋を覗き込むとゾンビが出現、その場に期待される音、など)

VRが作るUX(ユーザー体験)の方向性

ゴールドマンサックスが発表している2025年のVR/ARソフトウェア市場規模の予測と、様々なサイトに取り上げられたVRの展開事例を照らし合わせると、今のところVRが生み出すUXの方向性としては以下に集約されるのではないかと推察されます。

①エンターテイメントの拡張(ゲームやライブ体験など)

②観光

③教育・トレーニング(医療、エンジニアリング、講義、宇宙、軍事など)

④設計の確認(建築や自動車など)

2025年のVR/ARソフトウェア市場規模の予測

まとめ

  • VRが作るUXにおける最大の特徴は「臨場感・没入感」であり、単に360°の視界を自由に見渡せるだけでなく、好きな場所や時間、非現実世界にあたかも自分が存在したかのような体験を提供できる。
  • 臨場感は①空間要素、②時間要素、③身体要素から成り立っており、外的要因と内的要因から生み出される。
  • VRが作り出すUXの方向性としては、①エンターテイメントの拡張、②観光、③教育・トレーニング、④設計の確認に集約される。

コメントの入力は終了しました。