配送・物流企業の成功事例(日立物流)と人手不足課題の解決策

配送業界&物流業界-2

前回の記事「アマゾンなどのEC発展と配送・物流業界動向の関係」に引き続き、今回は配送・物流業界の成功事例および課題と解決策について解説していきます。

売上・営業利益が急成長の日立物流

配送・物流企業の大手5社の2002年から2016年までの売上と営業利益の年平均成長率(CAGR)を比較すると、日立物流が売上、営業利益ともに成長率トップとなっており、それぞれ年平均7.2%、11.3%の成長を遂げていることが分かります。

他企業の売上および営業利益の年平均成長率は、日本通運が0.8%、7.4%、ヤマトHD(ヤマト運輸)が3.0%、1.8%、SG HD(佐川急便)が1.8%、6.2%、日本郵便(郵便事業のみ)が0.4%、-22.7%となっていることからも、日立物流の成長率の高さが分かります。

CAGR

日立物流の成長要因はM&Aと3PL(サードパーティ・ロジスティクス)

なぜ日立物流がここまでの急成長を遂げてきたのでしょうか?

その成長要因の一つが配送・物流企業のM&Aだと考えられます。日立物流の主なM&Aの沿革を見ていくと、’05年のクラリオン・エム・アンド・エルから始まり、’07年に資生堂物流サービス、’08年にタカノ物流サービス(”おかめ納豆”で有名なタカノフーズの子会社)、スミダロジネット(靴卸大手だったトークツの子会社)、’09年にオリエント・ロジ(内田洋行の子会社)、’11年にDICロジック(インキ大手メーカーDICの子会社)、ダイレックス(DCMホールディングスの孫会社)をM&Aしました。また、’12年にバンテック(自動車部品物流の大手企業)を完全子会社化し、’13年にも日立ロジテック(日立電線の子会社)をM&Aし、グループ傘下に収めています。

このようにM&Aを繰り返すことで日立物流は事業を急拡大してきました。

日立物流の主なM&A

日立物流の急成長要因のもう一つとしては、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)が挙げられます。3PLとは、配送・物流企業において従来の輸送業務を担うだけでなく、材料供給から製造、卸し、小売販売といったサプライチェーンの各プロセスの梱包、輸送、倉庫保管、流通加工、情報システム管理、物流コンサルティングを一挙に担い、物流全てを包括管理することを指します。3PLにシフトすることにより配送・物流企業の付加価値が増し、収益性も高まると考えられています。

日立物流は国内企業でいち早く3PL事業へ乗り出し、様々な業界の物流子会社をM&Aすることで、各業界の物流ノウハウを取り入れてきました。それによって、営業利益も拡大してきたと言えます。

3PL(サードパーティ・ロジスティクス)

国内配送・物流企業の生き残り戦略はM&Aと物流ノウハウ輸出!?

国土交通省資料における物流市場規模の内訳を見ると、トラック運送が14.4兆円と圧倒的に大きいのですが、外航海運分野や倉庫分野も4.3兆円、1.8兆円と大きな市場規模であることから、陸運送企業とこれらの分野の企業のM&Aによる生き残り戦略が大きな流れとして考えられます。このような事業分野をまたいだM&Aによって物流を包括管理する3PLへのシフトも今後ますます加速すると予測されます。

物流市場規模の内訳

もう一つ注目したいデータとして、日米企業における売上高物流コスト比率です。これは様々な業界の企業における売上に占める物流コスト比率を比較したデータです。

このデータによると、アメリカでは物流コスト比率が9%を超えるのに対して、日本では5%を切っており、アメリカの半分の物流コスト比率です。このようにアメリカをはじめとする海外では物流コスト低減に改善の余地があるため、日本の配送・物流業界の徹底したコスト管理のノウハウを展開することで、付加価値を生み出すチャンスがありそうです。海外物流コンサルティング事業なども今後増えてくるかもしれません。

日米における売上高物流コスト比率

配送・物流業界で深刻化する人手不足問題

厚生労働省の統計データによると、2016年の有効求人倍率は全職種平均が1.22倍に対して、輸送・機械業の自動車運転手は2.33倍になっており、配送・物流企業におけるトラック運転手の人手不足の深刻さが分かります。また、この傾向は下のグラフから年々大きくなってきており、人手不足に対する解決策が見つかっていない状態と言えます。

輸送・機械業の自動車運転手の有効求人倍率

UXデザイン手法による人手不足問題の解決策

前回の記事で宅配便の取扱個数が増加しているのは、ECサービス市場の拡大によるものと分かりましたが、そのECサービスユーザーのUX(ユーザー体験)視点から、どのようなニーズがあり、それらのニーズを満たしながらも人手不足問題を解決できるような策がないか考察していきます。

まず、ECサービスユーザーの気持ちを”商品購入”、”商品待ち”、”商品受け取り”の3つの行動ステップで考えていきます。商品購入時のユーザーの気持ちとして、「時間・場所を気にすることなく買い物したい」「店舗まで行きたくない」「自宅まで商品を届けてほしい」などがあります。商品を待っている時は「商品をすぐに届けてほしい」と考えたり、受取り時は「受取り時間を拘束されたくない」「配達員と顔を合わせたくない」などが挙げられます。

これらはつまり、”時間と場所に縛られることなく商品を入手したい”というインサイトがあるのではないでしょうか。

UXデザイン観点によるECユーザーニーズ

この”時間と場所に縛られることなく商品を入手したい”というインサイトを満たし、人手不足を解決するような配送・受取り方法としてはどのようなアイデアがありそうでしょうか?今回は以下の3つの解決策を考えました。

①コンビニ受取りの拡充

今やコンビニエンスストアは日本全国で55000店舗を超える店舗数に成長しており、田舎でも近所に1店舗はあるのではないでしょうか?このコンビニでの受取りをより浸透させられれば、受取り手は配達時間に家にいる必要はなく、自分の好きなタイミングで24時間いつでも荷物を受け取れるようになります。

また、配送業者にとっても配送を非効率的にしている要因である再配達をする必要がなくなり、人手不足問題の低減につながります。

②仮設の配送受取りボックスの設置サービス

それほど大きな荷物でなければ、受取人が不在時はドアノブや壁に固定できるような仮設の受取りボックスを設置し、そのボックスの中に荷物を入れておけば再配達も不要になります。受取る方も家にいる必要はなくなります。IoT技術を使えば、受取人がスマホアプリなどで本人の受取り確認署名をしてボックスから中身の商品を取り出したら、配送管理センターのシステムで検知し、配送業者が近くを配送する時に受取りボックスを回収するようなことも可能かもしれません。

パナソニック エコソリューションズ社の実証実験においても、宅配ボックスを設置することで再配達率が設置前の49%から8%まで減少し、労働時間も約65.8時間の削減につながったという結果があります。

③コンビニから女性や高齢者に配送してもらう仕組み

コンビニを配送センターの小さなハブにして、配送業者がコンビニへ届けた荷物を女性や高齢者などが近所の届け先に届けるような仕組みを作れれば、再配達が必要なくなるだけでなく、ある程度の量をコンビニへまとめて配送できるため、配送・運送効率も改善される可能性があります。

配送/受取りのUXデザイン

まとめ

  • 日立物流の成長要因はM&Aと3PL(サードパーティ・ロジスティクス)
  • 国内配送・物流企業の生き残り戦略はM&Aと物流ノウハウの輸出がカギとなる
  • 配送・物流業界で深刻化する人手不足問題は、①コンビニ受取りの拡充、②仮設の配送受取りボックスの設置サービス、③コンビニから女性や高齢者に配送してもらう仕組み、などによって解決できる可能性がある。