サービスデザイン書籍/本の翻訳プロジェクト発起人 赤羽太郎氏に聞いた事まとめ

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従来の対面式や紙媒体を通したサービスに加え、WEBやスマホアプリのようなIT・デジタルサービスも浸透し、私たちの身の回りには数え切れないほどのサービスが取り巻いています。総務省の統計によると、日本国内における2015年の会社設立数は111,238件(株式会社、合同会社などの合算)及んでいますが、その中で10年以上存続する企業はわずか6.3%とも言われています。そのため、多くの新規サービスがローンチされる一方、世の中に受け入れられずクローズしてしまうサービスも多数あります。

そのような状況の中、ユーザーにとってのサービス価値をより高めるために何をすべきか、ステークホルダーも巻き込んで設計(デザイン)していく「サービスデザイン」が重要視されてきています。そんなサービスデザインについて、株式会社コンセント サービスデザインチーム責任者で書籍「Designing for Service」の翻訳プロジェクト発起人の赤羽太郎氏に聞いてみたことをまとめました。

サービスデザイナー 赤羽 太郎氏とは?

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国際基督教大学人文科学科卒業後、株式会社コンセントに入社。現在は同社のサービスデザインチーム責任者・シニアサービスデザイナーとして新規サービス事業などのプロジェクトに従事。また、コンセントにおけるサービスデザインチームの立ち上げを行い、当初のメンバー5人から20人程までにチームを拡大しています。

サービスデザインの普及、啓蒙を目指す国際組織”Service Design Network”の日本事務局運営をしていたり、HCD-net認定の人間中心設計専門家でもあります。UXデザインやサービスデザイン関連のセミナー登壇活動のほか、NPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-net)のUXデザイン関連書籍の翻訳チームに参加しており、共訳書に「サービスデザイン ユーザーエクスペリエンスから事業戦略をデザインする」、「SFで学ぶインターフェースデザイン -アイデアと想像力を鍛えあげるための141のレッスン-」(ともに丸善出版)などがあります。

UXデザインとサービスデザインの定義の違いは?

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UXデザイン(ユーザー体験設計)は、サービスを利用するユーザーを主な対象として、人間中心設計(HCD:Human-Centered Design)に基づいたデザインを指します。そのため利用ユーザーとサービスのタッチポイント、UI部分について議論されることが多いです。

一方、サービスデザインはUXデザイン領域のユーザータッチポイントやUI部分だけでなく、サービスの裏側のオペレーションにもフォーカスしてサービス全体をデザインします。したがって、デザインする領域はプロダクトだけにとどまらず、利用ユーザーからは見えない部分のオペレーションやサービスを運営する組織構造、文化にまで及びます。オペレーターやステークホルダーとの合意形成も取りながらデザインすることが求められるため、赤羽氏はサービスデザインを”巻き込むデザイン”と述べています。

なぜ今サービスデザインが必要なのか?

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2013年に大手コンサルティング会社アクセンチュアがロンドンに本社を置くデザイン会社Fjord(フィヨルド)をM&A(買収)し、その後も2013年にPwC(プライスウォーターハウスクーパース)がクリエイティブ広告代理店のBGTパートナーズを買収、2015年にマッキンゼーがデザイン会社LUNAR(ルナー)を買収、2016年に博報堂DYホールディングスの戦略事業組織「kyu(キュ)」がアメリカのデザインコンサルティング会社IDEO LP(アイディオ)へ出資を行い、30%の持分を取得したり、コンサルティング・代理店企業によるデザイン会社のM&Aが続いています。また米IBMでは2012年には375人しかいなかったデザイナーが2015年には1100人にまで増加し、さらに2017年には1500人にまで増やす計画があるとも言われています。

この理由として、事業・サービスを新規に創り出したり、グロースさせるために再構築したりする時にデザイン思考・手法が必要になるケースが増えてきているためと考えられます。クライアント企業からも戦略提案だけでなく、一緒に事業・サービスを創り出してほしいというニーズがあり、実際にプロトタイプを制作、テストマーケティングし、リーン的にPDCAを回しながらサービスデザインすることが求められているのではないでしょうか。

このようにデザインとコンサルティングの領域が曖昧になりつつある今だからこそ、デザイン領域とコンサルティング領域とを改めて定義する必要性もあるのではないかと赤羽氏は問いかけています。

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サービスデザインを実践するフレームワーク・方法

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サービスデザインでもUXデザインの領域を含むので、ペルソナ作成やカスタマージャーニーマップのようなUXデザインで使うようなフレームワークや方法も使えます。サービスデザインに特有のフレームワーク・方法としては「サービス・ブループリント」があります。これは顧客ユーザーの行動・心理などに加え、顧客と直接接するサービスのタッチポイント部分や顧客とは直接接さないサービスの裏側部分のオペレーション部分についても行動・心理・課題などを整理し、サービスの全体像を俯瞰して捉えられます。

サービス・ブループリント以外にも対象サービスを取り巻く環境や他サービスとの繋がりなどを整理するサービスエコロジーマップ、実体験型でサービスを実際にオペレーションしてみて改善していくサービスプロタイピングなどもあります。

サービスデザインに必要なスキルは何か?

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サービスデザインのベースとなるスキル・志向として、ユーザー調査、HCD(人間中心設計)、UIデザインといった”UXデザイン”スキルとサービスに関わる人たちを巻き込みながら一緒に課題解決していこうとする共創志向の2つではないかと赤羽氏は言っています。

サービスデザインは前述した通り、組織をまたいだ複数のステークホルダーの意向、ビジネス的な意義、顧客体験のバランスを取りながら合意形成していく必要があり、顧客中心のUXデザイン視点を踏まえた上で異なる利害や行動原則を持つステークホルダーの共創的なプロセス参加が重要になります。また、サービスデザイン後の運用や継続的な改善には、サービスのステークホルダー全員が主体的に行動する必要があり、彼らを巻き込むことによって主体的にサービスをドライブしてもらう意識を持ってもらうためにも共創志向が重要だと赤羽氏は強調します。

それを支えるためにも、サービスやそれに関わるものを構造的に捉え、異なった利害のバランスを組織間で共有していく情報アーキテクチャ(IA:Information Architecture)が周辺スキルとして必要とされたり、社会学、政治経済学、行動心理学、イノベーション戦略など、その他のスキルもプロジェクトに応じて必要になってきます。

また赤羽氏はサービスデザインのプロジェクトを成功させるためには、T型人材のメンバーがお互いに相互補完し合うことが重要とも言っています。

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サービスデザイン本・書籍「Designing for Service」の翻訳プロジェクトに赤羽太郎氏がかける思い

最後に赤羽氏に今回のサービスデザイン本・書籍「Designing for Service」翻訳プロジェクトにかける思いを聞いてみました。

「最近、日本でもデザインアプローチが浸透してきていますが、企業や行政において、もっとサービスデザインが活かせる場はあると思います。イギリスではデザインに1ポンド投資すると26ポンドのリターンがあると言われる程、デザインは投資対効果が高く、デザインがあれば何か始められると思っています。その中でもサービスデザインは拡張性が高く、そういうデザイナーがいることを知ってほしいですし、この本を通してサービスデザインに興味を持ってくれる人が増えれば嬉しいです。最終的にはデザイナーがディープに活躍する場を日本にもっと創り出していきたいですね!」

サービスデザインについて、大変丁寧に優しく解説して頂きましたが、その言葉にはサービスデザインの未来に対する熱い思いが込められていました。 本書「Designing for Service」の翻訳プロジェクトは、今年12月11日までクラウドファンディングで応援ができます。ご興味を持たれた方は以下のリンクから詳細をご覧ください。

今注目の「サービスデザイン」を再定義する。イギリスの最先端の研究論文集『Designing for Service』を翻訳出版したい!

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