化粧品業界研究|あなたが資生堂CEOならどのような経営戦略を取るか?

国内敵なしの資生堂も仏ロレアルとの差は大きい

化粧品業界の競合の売上は、ロレアルが3兆3829億円と資生堂の売上の3倍以上の規模を誇っています。その後にエスティローダー(1兆2888億円)、資生堂が続きます。

日本国内では、資生堂の後にコーセー(3033億円)、ポーラ・オルビス(2443億円)、ファンケル(1090億円)、マンダム(773億円)、ノエビア(544億円)、シーズホールディングス(429億円)が続きますが、売上規模では資生堂が圧倒的に大きいことが分かります。

化粧品業界においては資生堂の営業利益率は低め

競合との営業利益を比較すると、売上に比べて資生堂の営業利益が低くなっています。営業利益率を見ても、資生堂が8.0%であるのに対して、仏ロレアルは18.0%、米エスティローダーは14.3%、独Beiersdorf AGは15.4%、韓Amore Pacificは12.1%と高い水準になっています。

国内化粧品企業の営業利益率も、コーセーが16.0%、ポーラ・オルビスが15.9%で、ECに強いシーズホールディングスにおいては19.8%と資生堂よりも2倍以上の水準になっています。

なぜ、資生堂の営業利益率は競合と比べて低くなっているのでしょうか?

販管費が資生堂の営業利益を圧迫している原因

化粧品競合の販管費率、原価率、営業利益率を比較すると、資生堂の販管費率が69.0%でもっとも高いことが分かります。資生堂の原価率(23.0%)は、売上規模に応じて原材料の仕入れコストなどを低く抑えられていると考えられ、競合と比較しても低い水準になっています。

上記より資生堂の営業利益率が低い主な要因は、販管費の高さと言えそうです。

高コストな資生堂の販売モデル(制度品)

化粧品の販売チャネルは、一般的なメーカー → 卸売業者 → 小売業者 → 消費者といった販売チャネル以外にも「制度品」「訪問販売」「通販・EC」などがあります。

資生堂やコーセーは販売チャネルの一つとして制度品モデルを採用していますが、この制度品モデルは、もともと小売店による過度な安売りを防ぐために導入されたシステムです。仕組みとしては、化粧品メーカーと契約した小売店のみにしか化粧品を供給せず、化粧品メーカーは小売店に美容部員と呼ばれるスタッフを派遣し、化粧品カウンセリングや販売促進を行います。そのため制度品モデルは、化粧品メーカーが美容部員を抱える分の人件費(販管費)が増加してしまいます。

資生堂が美容部員の販管費をかけた分だけ、化粧品の価格を上げられたり、販売数を増加させることができれば営業利益率も低くなりません。しかし、現状は美容部員分のコストをかけても低価格商品との差別化を消費者に訴求できず、より高い利益を打ち出せていなかったり、ECやドラッグストアという新たな販売チャネルでの購入へ消費者がシフトし、百貨店や化粧品専門店でカウンセリングを受けた購入量が減ってしまっていると考えられます。

そのため、資生堂の営業利益率も低くなってしまっていると言えそうです。

コーセーは人件費率を下げることで営業利益増加に成功

資生堂と同じく制度品モデルを採用しているコーセーは、なぜ16.0%という高い営業利益率になっているのでしょうか?

コーセーと資生堂の販管費率推移を見ると、両社は’11年頃まで同じ水準でしたが、’12年以降はコーセーの販管費率が低下していき、’17年の両社の差は11.8%も広がっています。

この主な要因としては人件費率の低減が挙げられます。コーセーの人件費率は’07年に25.4%ありましたが、’17年には17.9%にまで下がっていて、7.5ポイントも改善されています。一方、資生堂の人件費率は’07年が21.6%、’17年が23.8%で、2.2ポイント増加しています。

コーセーは、カウンセラーを必要としないドラッグストア・量販店向けの比較的低価格な化粧品ブランド(雪肌精、NAIL HOLICなど)へ力を入れており、人件費率低下に寄与していると考えられます。雪肌精シリーズはインバウンド需要も手伝い、’09年には150億円程度の出荷額だったのが、’15年には300億円を超える程に成長しています。

また、コーセーが’14年にM&Aした米子会社のタルトは、インスタグラムやツイッターなどのSNSを活用することでマス広告費(販管費)を抑えています。タルトの’16年度の売上高は282億円、営業利益は84億円(営業利益率:29.8%)で、コーセーの営業利益率を押し上げています。

海外の化粧品企業は国外展開に積極的

海外の化粧品各大手企業と資生堂の海外売上比率を比較すると、ロレアル(68.8%)、エスティローダー(59.3%)をはじめ、いずれも国外の売上比率が大きいです。資生堂も海外の売上比率が46.5%(免税店、ヘアサロン向けはその他の10.6%内に含む)で、決して小さい比率ではないものの、海外展開を進めていく余地がまだありそうです。

資生堂の利益はほとんど国内市場から生み出されている

資生堂のセグメント別売上・営業利益を見ても、売上は中国、米州、欧州の比率が高まってきていますが、営業利益はほとんど日本国内に依存している状況です。米州、欧州の赤字も改善されてきていますが、まだ資生堂の海外展開について課題が残っていると言えるのではないでしょうか。

資生堂とロレアルの研究開発拠点地域

資生堂とロレアルの研究開発拠点がある地域をマッピングすると、資生堂の研究開発拠点は日本、アメリカ、中国、シンガポール、フランスだけであるのに対して、ロレアルはさらに南米(ブラジル、コロンビア)、インド、南アフリカが追加されます。研究開発拠点がある地域を見ても、ロレアルのローカライズ化が進んでいることが分かります。

続いて化粧品業界の市場動向データを見ていきます。