データで見るeSports / eスポーツ業界・市場動向レポート(日本・海外)

TBSのテレビ番組”情熱大陸”で、東大卒のプロゲーマー「ときど」さんが特集されるなど、ゲーム・デジタル業界で注目を集めている市場の一つが、「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」です。

2019年に開催される”いきいき茨城ゆめ国体”の文化プログラム枠でeスポーツが採用されたり、2022年に中国で開催されるアジア大会において、eスポーツが正式競技となる見通しです。さらに2024年のフランスパリオリンピックでもeスポーツを正式種目として採用するかの議論が始まっています。

単なるゲームの領域を越え、スポーツ競技としての価値やビジネス面から今後の成長が期待されているeスポーツ市場について、動向を見ていきましょう。

アメリカ・中国・韓国を中心に成長するeスポーツ市場

市場調査会社Newzooによると、2018年における世界のeスポーツ市場は1000億円を超える見込みです。また、2021年には1865億円にまで成長すると予測しており、’14年対比で年平均成長率35.8%になります。

国別のeスポーツ市場規模シェアを見ると、アメリカが37%、中国が15%、韓国が7%となっており、3カ国だけで59%と半分以上の世界シェアを占めています。しばらくは、この3カ国が中心となりeスポーツ市場をリードしていきそうです。

一方、日本のeスポーツ市場規模は総務省が発表した報告によると4億円程度で、これは世界シェア約0.5%に値します。日本のeスポーツ市場は世界と比較すると、まだまだ発展途上と言えます。

アジアで増えるeスポーツ視聴者

年々eスポーツの視聴者も増加しており、’18年には熱狂的な視聴者数は1.65億人、カジュアルな視聴者数は2.15億人で、合計で3.8億人に達する見込みです。これは世界人口の5%にあたり、20人に1人がeスポーツ視聴している計算になります。さらに言えば、日本の全人口の3倍以上の視聴者がいることになり、非常に多くなっています。

また、’21年には熱狂的、カジュアルな視聴者数の合計は5.57億人に達すると予想されており、’14年対比で年平均成長率15.4%になります。

熱狂的なeスポーツ視聴者の地域別の分布を見ると、アジア太平洋が51%と過半数を占め、アジアでeスポーツ観戦が人気であることが分かります。eスポーツ市場規模シェアから考えると、中国と韓国の視聴者数が多いと推察されます。

また、欧州でも18%(2600万人)の熱狂的視聴者がおり、人気の高さがうかがえます。

従来スポーツとeスポーツのビジネスモデル比較

eスポーツのビジネスモデルとして、お金の流入経路としては2つあります。

1つ目はスポンサーからのお金です。スポンサーはeスポーツ大会興行主、プロチームまたは選手へスポンサー料を出したり、メディアへ広告料を出して、スポンサーの宣伝広告などを行います。

2つ目はファンからのお金です。ファンはメディアに視聴料、大会興行主にチケット・グッズ購入料、プロチームや選手にグッズ購入料・寄付金(投げ銭)を払います。

また、ゲームパブリッシャーに対してはゲーム課金を行い、ゲームパブリッシャーからそのゲームの大会興行主にパブリッシャーフィーとして支払われることもあります。補足すると、パブリッシャーにとってeスポーツ大会で自社のゲームが使用されることに大きなメリットを想定しにくい場合は、パブリッシャーフィーを支払うのではなく、逆に大会興行主からゲーム使用の許諾料をもらう流れになることもあります。

現状のeスポーツのビジネスモデルは、上述の通り、資金の出所がスポンサーとファンの2つになります。つまり、スポンサー数とファン数の増加、または、1スポンサー or 1ファン数あたりの平均資金を向上させることが、eスポーツ市場規模を拡大させる方法と言えます。

従来スポーツのビジネスモデルとの違いは上図の青色部分で、ゲームパブリッシャーの存在、

ファンからプロチームまたは選手への寄付金、メディア(TwitchやYouTubeなど)から動画配信している選手などへの広告料(チャンネル登録数やPV数などによって変動)が挙げられます。

スポンサー・広告料がeスポーツ収益の柱

eスポーツ収益の内訳ではスポンサー収益が2年で2倍以上に伸びており、収益シェアが最も高くなっています。’18年におけるスポンサー・広告収入の占める割合は59%あり、現状はスポンサー・広告収入がeスポーツ収益の柱と言えます。

また、放映権による収益も上がってきており、メディア各社がeスポーツに注目してきていると考えられます。

従来の人気スポーツと変わらぬ盛り上がりを見せるeスポーツ

各種スポーツの競技人口については正確な数値が出しにくいですが、eスポーツの競技人口は世界に約1億人いると言われています。この数値はテニス競技人口(1億人)と同等で、ゴルフと野球の競技人口(それぞれ6500万人、3500万人)よりも多い人口になります。

競技人口が多いということは、それだけ広告効果やグッズ・機器などの市場ポテンシャルも大きく、ビジネスチャンスが広がっていると考えられます。

経済誌ウォールストリートジャーナルの調査によると、LoL(リーグ オブ レジェンド)やPUBG(プレイヤー アンノウンズ バトル グラウンズ)といった有名ゲームのeスポーツ大会の視聴数は、アメリカの人気スポーツであるNFL(アメフト)、MLB(メジャーリーグ)、NBA(バスケットボール)の視聴数に匹敵または超えると伝えています。

(ただし、eスポーツはピーク時の視聴数、従来スポーツはテレビの平均視聴数を比較しているため、eスポーツに有利なデータでの比較になっているので注意が必要です。)

スポーツ大会別の賞金総額の比較においても、ゲームDota2(ドータ ツー)の大会”The International 2017”の賞金総額が27.1億円とかなり高額になっています。

これは野球(WBC)、ゴルフ(全英オープン)、クリケット(インディアン プレミアリーグ)、陸上(世界陸上)、自転車(ツール ド フランス)などの他のスポーツ大会賞金総額よりも10億円以上高い金額です。

主な海外大手企業のeスポーツ業界への参入動向

Amazon(アマゾン)は、’14年にゲーム動画配信プラットフォームのTwitch(ツイッチ)を9億7000万ドルで買収し、eスポーツ業界に参入を果たしています。そのTwitchを軸に、ゲームOverwatchリーグの2年間独占配信権を約102億円で購入したり、eスポーツメディアの地位を築きつつあります。

Google(グーグル)もTwitchの買収を検討していたと言われていますが、’15年に自社のYouTube Gamingをリリースしました。結局、本家のYouTubeとの差別化などが市場になかなか受け入れられず、’19年3月にサービスが終了予定ですが、中国のeスポーツライブストリーミングスタートアップ”Chushou(触手)”の約136億円出資をリードするなど、eスポーツ業界を諦めてはいなさそうです。

Facebook(フェイスブック)は、’16年にアメリカのゲーム会社Activision Blizzard(Call of Duty、スタークラフト、Overwatchなどの人気ゲームをリリース)と提携してゲーム実況市場に参入しています。また、Facebookが独占配信するPUBGの公式大会が開催されるなど、メディアポジションを中心に参入してきています。

Microsoft(マイクロソフト)は、’16年にライブストリーミングサイトのBeam(ビーム)を買収したり、ポルシェAGとeスポーツ分野などで6年間の提携を行ったりしています。

ウォルトディズニー傘下のスポーツ専門チャンネルESPNは、’15年からeスポーツ番組放送を開始し、’16年からは自社サイト内にeスポーツコーナーを開設しています。

中国企業の動向ですが、Alibaba(アリババ)グループは、’16年に賞金総額約6.2億円のeスポーツ大会を主催したり、’18年3月まででeスポーツ事業に約48.6億円(3億人民元)を投資しているとも言われており、積極的に展開しています。

さらにアリババグループはIOC(国際オリンピック委員会)ともパートナー契約を締結し、eスポーツをオリンピック正式競技種目にするために活動していると言われています。

売上高で世界最大の中国ゲーム会社Tencent(テンセント)もeスポーツ事業に積極的な投資を行っています。世界でも有名なゲームタイトル”League of Legends(LoL)”を運営する米Riot Games(ライアットゲームズ)を’11年に4億ドルを投じて買収し、’15年には100%子会社化しています。また、日本でも有名なゲーム”Fortnite(フォートナイト)”を運営する米Epic Games(エピックゲームズ)の株式を’12年に取得しています。

さらに’17年には今後5年間で約1.7兆円をeスポーツに投資し、eスポーツのテーマパークの建設計画もあることを発表しています。

以上のように海外の大手企業各社もeスポーツのメディア運営や大会運営に投資していることが分かります。次ページでは日本国内のeスポーツ業界動向について見ていきます。