SaaSサブスクリプションビジネスモデルの事業計画KPIシミュレーション

SaaSサブスクリプションモデルの事業KPIシミュレーション

それでは各指標を変化させた時にKPIやキャッシュフローがどのように変化するか、シミュレーションしてみます。

基準値を以下の表のように設定し、各指標を一つずつ変化(基準値よりも20%UP、40%UP)させていきます。

ARPU(顧客あたりの平均売上)の影響

ARPUを増加させると、LTは変わりませんが、LTV、ROI、回収期間が改善されます。

最大マイナスキャッシュ(下のグラフにおけるマイナスの深さ)も軽減され、資金面でも余裕ができます。また、累積キャッシュの黒字化時期(下のグラフにおけるマイナス期間の長さ)も短くなり、累積キャッシュ額や営利増額分(下のグラフにおけるキャッシュの立ち上がり具合)も増加します。

累積キャッシュを時系列にプロットすると以下のようなグラフになります。

粗利率の影響

粗利率を増加させた場合は、ARPUと全く同じ挙動を示すことが分かります。

CAC(顧客獲得コスト)の影響

CACを低下させると、LTやLTVに変化はありませんが、ROI、回収期間が改善されることが分かります。

最大マイナスキャッシュや累積キャッシュの黒字化までの期間が大きく減少します。また、5年後のキャッシュも基準値と比べると増加しています。

累積キャッシュのプロットは以下のグラフのようになります。

解約率(チャーンレート)の影響

解約率を減少させると、回収期間は変わりませんが、LTが増加することによって、LTV、ROIが改善します。

最大マイナスキャッシュ、累積キャッシュの黒字化期間も減少することが分かります。また、5年後の営業利益の増額が比較的大きくなることも特徴的です。

累積キャッシュのプロットは以下のグラフのようになります。

新規獲得顧客数の影響

新規獲得顧客数を増加させても、LT、LTV、ROI、回収期間、累積キャッシュ黒字化までの期間は変化しません。

最大マイナスキャッシュにおいては減少せず、新規顧客数が増える分、増加してしまうことが分かります。5年後の累積キャッシュや営業利益増額は、基準よりも増えるものの、他の指標よりも伸び率が小さくなっています。

これはサービス自身を改善しないで、営業ばかりを集中的に強化しても大きな成果が得られにくいことを示唆していると考えられます。

各指標の比較

これまでにシミュレーションしてきた各指標を40%向上させた状態を上の表にまとめました。

ARPUと粗利率は、ある程度の期間を経た時の累積キャッシュを向上させるのに最も影響を及ぼすことが分かります。

CACは、他の指標に比べて、ROI、回収期間、最大マイナスキャッシュ、累積キャッシュの黒字化までの期間へ与える影響が大きいと言えそうです。

解約率は、LT、LTV、ROIに比較的大きく寄与することが分かります。また、営業利益の増額(累積キャッシュの立ち上がり具合)にも大きく影響し、経過時間を長く取れば、解約率を改善した方が、ARPUや粗利率を改善した時の累積キャッシュを追い越します(今回のシミュレーション値では115ヶ月後に追い抜きます)。

また、各指標の比較においても、新規獲得顧客数を増加させたものは、他の指標より改善しにくいことが分かります。

それぞれの累積キャッシュを以下のグラフにプロットしました。

KPI(ROI、回収期間)の参考値

最後にSaaSサブスクリプション業界において、目標と言われている値をご紹介しますので、事業計画を立てる時などのご参考にしてみてください。

ROI > 3.0

CACの回収期間 < 12ヶ月

まとめ

サブスクリプションモデルが注目されている理由、収支構造やKPIツリー、各指標を変化させた時のシミュレーションを考察してきました。

今回は、あくまでシミュレーションですので、事業環境が違えば、各指標の改善のしやすさ、変化率なども異なるかもしれません。

サブスクリプションモデルを運営していたり、検討されている方は、ご自身の事業指標をもとに値を色々変化させてみたりすることで、新たな発見ができるかもしれないので、シミュレーションしてみてはいかがでしょうか?