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コンサルティング・受託ビジネス業界のKPIツリー

コンサルティングやシステム開発関連の受託事業は労働集約型になりやすく、稼働人数や稼働人材の単価(1ヶ月フル稼働した時にクライアントに請求する1人あたりの金額)が売上の要素になり、これまでのKPIツリーとは少し毛色が異なりますが、見ていきましょう。

コンサルティング・受託事業のKPIツリー例

コンサルティングや受託事業の売上は、上図のように会社全体の稼働人数ベースかプロジェクトベースの切り方でKPIツリーを作ることができます。

会社全体の稼働人数ベース:人月単価 × 稼働人数

プロジェクトベース:月平均プロジェクト数 × プロジェクトの月平均売上

コンサルタントの人月単価は平均200〜350万円程度?!

各社の稼働率を90%(SHIFTは決算資料より82%と算出)とした時の稼働人数(=従業員数×稼働率)と人月単価を比較しました。

人月単価がもっとも高かったのは、コンサルティング企業のシグマクシスで331万円/人月でした。シグマクシスと同等レベルに野村総研のIT部門(328万円/人月)があり、その後は三菱総研のコンサル部門(222万円/人月)、野村総研のコンサル部門(213万円/人月)、ドリームインキュベータ(211万円/人月)と開きがあるようです。

しかし、野村総研のIT部門などはシステムをパッケージ化した商材も取り扱っているでしょうから、実際の人月単価はもう少し低いかもしれませんし、ドリームインキュベータはコロナの影響で営業投資セグメントの売上が前年比72%減となっており、従来よりもコンサルタントの人月単価が少なく見えてしまっている可能性があります(決算資料で戦略コンサルティングのプロフェッショナルセグメントと営業投資セグメントの従業員数が切り分けられなかったため、2つを合わせた人月単価になっています)。多少の違いはあるものの、今回調査した企業のコンサルタントの平均人月単価は200〜350万円/人月程度と考えられそうです。

ソフトウェアテストの受託をメインとしているSHIFT(シフト)について、テストエンジニアの人月単価は増えてきていますが、69万円/人月とコンサルタントの20〜35%程度です。その代わり、決算資料を見ると従業員応募者数、年収、年収増加額などの情報を公開しており、従業員数を積極的に増やすことでスケールアップしていく狙いを感じます。

今年6月に新規上場したGoodpatch(グッドパッチ)のデザインパートナー事業(デザインコンサルティング・制作・プロジェクトマネジメント)の平均人月単価は146万円/人月まで上がっており、デザイナーの市場価値を上手く向上させていると言えるのではないでしょうか。

単価と稼働工数が左右する労働集約型のビジネスモデル

シグマクシスとグッドパッチを比較すると、プロジェクトあたりの月平均工数はあまり変わらないものの、月平均プロジェクト件数とプロジェクトあたりの月平均売上についてはシグマクシスの方がグッドパッチよりもそれぞれ3.7倍、2.8倍大きくなっていて、労働集約型のビジネスモデルにおける人月単価と稼働工数の重要性が分かります。

グッドパッチはデザインパートナー事業以外にも、デザイナー特化型の職業紹介事業やSaaS事業(プロトタイピングツール”Prott”、クラウドワークスペース”Strap”)を展開しており、労働集約型モデルのみに依存しない方向性を考えているのではないでしょうか。

その他マッチング系プラットフォームのKPIツリー

最後に、これまでに登場してこなかったその他のマッチングプラットフォーム(出前館、アトラエ(Green)、スペースマーケット)について、KPIツリーと事例データを見ていきます。

マッチングプラットフォームのKPIツリー例(toB側 / toC側)

KPIツリーは上図のように企業側(toB)と一般ユーザー側(toC)から成り立つリボン型のモデルになります。基本的には一般ユーザーと企業を多く集め、プラットフォーム上で両者をマッチングし、その手数料を売上とするビジネスになります。

集客数と成約率をいかに増やすかがビジネスのカギになるモデルです。

業界に状況に合わせた手数料率設計

出前館の売上を流通総額(’19年流通総額およびオーダー件数と’20年Q2のオーダー件数から推測)で割って算出した手数料率は7.7%で他の2社よりも低くなっています。

※出前館サイトではサービス手数料率:10%、配達代行手数料率:30%と記載。

飲食の場合、そもそも商品単価が低く、手数料率を高くしてしまうと飲食店の負荷が高くなったり、消費者側が注文を敬遠してしまうため、なかなか手数料率を上げにくいと思われます。日本のUber eats(ウーバーイーツ)のサービス手数料率も10%に設定されており、フードデリバリー業界では、この手数料率が現状の限界かもしれません。

転職サイトGreen(アトラエ)の手数料率は、売上流通総額をIT人材の平均年収×成約件数と仮定して、売上で割って求めると17.5%でした。

Greenの場合、スカウトから面談設定までは求人企業が行う必要はありますが、一般的な職業紹介事業の手数料率が35%であることを考えると、求人企業側にとっては良心的な手数料率かもしれません。

スペースマーケットの手数料率は30%を超えており(スペースマーケットのサイトでは時間貸しの場合が30%、宿泊の場合が10%と記載)、他の2社に比べて高い手数料率を実現できています。

スペースを貸し出す側としては、大きな利益が得られなくても、空いてるスペース(非稼働資産)を眠ったままにしているよりは”マシ”という考えになるでしょうから、スペースマーケットは貸し手側のそのような心理状況を上手く突いた手数料設計にできていると考えることもできます。

出前館、Green(アトラエ)、スペースマーケットの成約数と成約単価

出前館の’20年Q2のオーダー数は821万件、成約単価(=(オーダー手数料+配達代行手数料)÷オーダー数)は150円でした。1件ごとの単価は低いものの、大量のオーダーを裁くことで売上を確保しています。

1店舗・1Qあたりの平均オーダー数は383件で、店舗側の平均単価が700円とすると、店舗側の出前館経由の平均月間売上は約9万円(≒700 × 383 ÷ 3)と計算できます。

転職サイトGreenの’20年Q2の成約数は847件しかありませんが、成約単価は82.7万円/件と人材市場の単価の高さが目立ちます。Greenは就職先の勤務地ごとに成果報酬が異なっており、東京:90万円、東京以外:30〜70万円になっているため、やはり東京勤務の成約数が多いと思われます。

また、1企業・1Qあたりの平均採用件数は0.12件で、2年間で1人をGreen経由で採用している計算になります。ただし、あくまで累計登録企業の平均であることと、コロナウイルスの影響で直近の求人数が減少していることから、従来、アクティブにGreenを活用している企業はもう少し採用できているかもしれません。

スペースマーケットは1回あたりの成約単価ではなく、1スペース・1Qあたりの売上単価になっていますが、平均2.15万円の売上となっているようです。

Greenとスペースマーケットの他KPI

Greenとスペースマーケットのその他KPIは上記のようになっていました。

スペースマーケットのサイト掲載スペース件数あたりの成約率がかなり高く見えますが、それだけレンタルスペースのニーズが高いのかもしれません。

コロナウイルスの影響でリモートワークが増え、オフィスを縮小する企業も出てきてる一方で、対面でのミーティングもなくならないでしょうから、オフィスは小さくして無駄なコストは省きながら、シェアスペースを有効活用する企業も増えてくるかもしれません。そういう意味でもスペースマーケットのKPIは今後も注目すると面白いかもしれません。

まとめ

前回の記事「KPI設計&分析|EC・SaaS・クラウドファンディング業界事例データ」に引き続き、スマホゲーム、WEB広告メディア、コンサルティング・受託系事業、フードデリバリー・転職求人・貸しスペースといったマッチングプラットフォーム業界のKPIツリーと各企業のKPI事例データを調べてみました。

KPIを調べる事で同じ業界のサービスでも、低単価でボリュームを増やすか、ボリュームは絞っても高単価のサービスを提供したり、各社のサービス戦略が分かったりします。また、競合サービスのKPIを使ったり、仮定を置いたりすることで開示されていないKPIを推測し、気付きを得られることもあります。

みなさんも是非、興味のある企業や業界のKPIを分析してみてください。

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